昭和十一年に東京のボン書店から出版された本書は、
わずか百部という限定版であったが即日発禁になった。
問題になったのは「恋愛」と題する作品の大部分で
”風俗壊乱”がその発禁理由であった。
具体的にいえば、そこには性愛に関するポーズが、
山中氏の回想によるとそれはかなりリアルな表現ではあるが、
しかしシュルレアリスム流の特異な譬喩法による、
いわゆるオチがそれぞれに加えられ、
表現上の巧みな転移が試みられているから、
俗な欲情は挑発せず、むしろユーモアの突拍子もない
偶発をよび起すものであった・・・。