ボルヘスと並ぶ、アルゼンチンの代表的幻想作家フリオ・コルタサルは1914年ブリュッセルに生まれた。
少年の頃から英・米・仏の古典文学、さらにはシュルレアリストらの作品を愛読した彼は、
1951年渡仏後、前衛的手法と文体を駆使した問題作を次々と発表し、
なかでも衝撃的実験作『石蹴り遊び』<1963年>により、一躍ラテンアメリカ文学の代表的作家として注目される。
純朴な老女中の眼に映る、退廃したホモ・セクシャルの世界を活写した「女中勤め」、
チャーリー・パーカーの悲劇的生涯に材をとった佳編「追い求める男」等を収めた本書は、
崩壊する日常生活を突き破って噴出する悪夢・幻想・狂気を描き、
その彼岸に輝く啓示的至高点を求めんとするコルタサルの、傑作中・短篇集である。